認知症の相続人がいる場合の不動産売却と相続税対策について、多くの方が頭を悩ませています。特に相続人が重度の認知症を患っている場合、不動産の売却どころか、相続税の支払いすら困難な状況に陥ってしまうことがあります。
「相続税の支払期限が迫っているのに、主たる相続人が認知症で意思確認ができない…」「不動産はあるのに現金がない…」このような切実な悩みを抱える方は少なくありません。しかし、このような状況でも、適切な対策を取ることで問題を最小限に抑えることができます。
認知症の相続人がいる場合の対策として、成年後見人制度の活用や家族信託の設定、不動産の物納申請など、いくつかの選択肢が用意されています。本記事では、これらの対策について紹介します。
• 相続税支払いのための資金確保方法
• 不動産売却が困難な場合の代替手段
• 将来の相続に向けた事前対策
特に注目していただきたいのは、早期の対策の重要性です。認知症になる前に家族信託を設定しておくことで、相続時の混乱を大きく軽減できます。また、任意後見制度を活用することで、将来の意思決定の問題も解決できます。
この記事を最後まで読むことで、認知症の相続人がいる場合の具体的な対処法と、将来に向けた備えについて理解を深めることができます。参考にしてください。
相続人が認知症！不動産売却できない・相続税も払えない相続地獄【体験談】
20代男性の体験談 これは数年前に私が実際に経験した、相続トラブルの話です。それは1本の電話から始まりました。
寝耳に水の一報。それもそのはず…祖父は80歳を超えてもなお毎月ゴルフを楽しみ、体操教室に通い、現役で仕事をしていた健康人間だったからです。
『まさかおじいちゃんが…』信じられない気持ちを抱えたまま、当時遠方に住んでいた私は、急いで最低限の荷物をまとめて新幹線に飛び乗ったのです。
出先で亡くなると不審死扱い！現場検証と司法解剖がもれなくついてくる
連絡から数時間後、病院につくと、叔母と母が私に事情を説明してくれました。
二人ともまだ現実が受け入れられないのか、どこか他人事のように伝えてきました。そして祖父はその数日後、息を引き取りました。
病室で祖父を看取った私たち親族には、悲しみにくれる時間はありませんでした。その直後に病院側から驚きの言葉を聞かされたのです。
そんな苛立ちや不安を抱きながら、そのまま病院で待機させられること数時間。やってきた不愛想な警察官はお悔やみの言葉ひとつなく、開口一番、
私たちには祖父の死を悲しむ猶予も与えられず、現場検証の立ち合いや各所への連絡、死亡の手続きと慌ただしい日々を過ごしました。
祖父の遺体が私たちの元に帰ってきたのは、死後10日以上が経過してからでした。なんと驚くことに 死体の運搬費用等は親族負担です。
結局その後も慌ただしく過ごすことは変わらず、ようやく葬儀が終わったのは、祖父の死から1カ月近く経過した後でした。
ようやく一段落ついたものの、まだ安堵することは出来ません。いちばん大きな仕事が残されているからです。葬儀の後、叔母が重い口を開きました。
認知症患者の資産は現金化できないが「現金」納付の相続税は待ったなし！
亡くなった祖父の家族構成は、配偶者である妻と娘が二人。長女の私の母と、独身同居で次女の叔母…少人数でシンプルな構成です。
しかし我が家の相続には、大きな問題が２つ立ちはだかっていました。
複数の土地を保有しているにも関わらず、現金の相続資金がない。
相続時に発生する相続税は現金で納税が原則で、申告は10ヶ月以内です。売却が難しく現金化しにくい土地であっても、一旦は現金換算して、相続税を現金で納税しなくてはいけないのです。
そして我が家の最大の問題は、相続割合でいえば資産の１／２を相続し、納税しなくてはいけない祖母が認知症であった点です。
認知症、つまり意思表示が出来ない者の資産は、勝手に現金化することが出来ません。それでも節税対策や遺産配分を変更するわけにもいかないため、私達は途方にくれました。
多額の相続税を払った上に売れない土地が残されて相続が完了した…
私は当時銀行員であり、お客様相手に相続がらみの提案をすることも多くありました。そんな金融知識が豊富な私ですら、自分たちの身に降りかかった相続の手続きは困難を極めました。
最終的には税理士や信託銀行の力を借りて、なんとか相続の手続きを行うことになりました。
土地は買い手がいなくても、ある程度の値段が付きます。財産を相続放棄する手もありますが、私たちの場合は同居している叔母がいる手前、それはできませんでした。
そのため最終的に、多額の税金を払った上に売れない土地が残されたまま相続が完了したのです。
相続地獄は終わらない！祖母の死亡で発生する相続対策に打つ手なし
しかし、これで我が家を見舞った嵐が過ぎ去ったわけではありません。なによりも困ることで、そう遠くない将来に確実に起こるのは、認知症の祖母が亡くなって発生する相続です。
再び何も対策できることなく、まるまる税金を払うしかない…そんなシナリオが残されていると考えるだけで気が滅入ります。
私が銀行に就職した時、祖父はぼそっと「家族信託で、財産でお前らが困らないようにしておくな」と私に耳打ちしてきたことがありました。
死ぬ直前まで元気にゴルフ等を楽しんでいた祖父は、終活にも関心が高かったので安心していた矢先、まさかこんなことになるとは…。
終活に無頓着でいるのは残された親族に多くの負担を残すだけでなく、故人との別れを悲しむ猶予すら奪ってしまうことに繋がります。
自分はまだ大丈夫。元気だから終活なんてまだ先でいい…ではなく、残される大切な人のためにも早めの備えを考えておくことをおすすめします。
▲ここまでが20代男性の寄稿▲
認知症と不動産が引き起こす相続地獄：予期せぬ困難と対策の重要性
この体験談は、相続に関する複雑な問題と、事前の準備不足がもたらす困難を示しています。以下に、この状況での解決策や改善点を説明します。
事前の対策
via：家族信託のおやとこ
家族信託の活用
祖父が言及していた家族信託を実行していれば、多くの問題を回避できた可能性があります。家族信託を設定することで、以下のメリットがあります。
1. 認知症になっても財産管理が可能
2. 相続税の節税効果
3. 遺産分割の紛争防止
任意後見制度の利用
祖母の認知症に備えて、任意後見制度を利用することも有効でした。これにより、認知症になった場合でも、あらかじめ指定した人が財産管理や重要な決定を行うことができます。
相続時の対応
成年後見人の選任
祖母が重度の認知症であった場合、成年後見人を選任することで、法的に有効な意思決定や財産管理が可能になります。これにより、相続手続きや資産の現金化がスムーズに行えた可能性があります。
不動産の売却や活用
相続税支払いのための現金が不足している場合、以下の方法を検討できます。
1. 不動産の一部売却
2. 不動産担保ローンの利用
3. 相続税の物納制度の活用
専門家への早期相談
相続の複雑さを考慮すると、税理士や弁護士などの専門家に早期に相談することが重要です。専門家の助言により、適切な対策を講じることができます。
今後の対策
祖母の相続に向けた準備
将来の祖母の相続に備えて、以下の対策を検討すべきです。
1. 残された不動産の評価と活用方法の検討
2. 相続税の試算と支払い方法の計画
3. 家族間での話し合いと合意形成
終活の重要性の認識
この経験を教訓として、家族全員が終活の重要性を認識し、以下の準備を進めることが大切です。
1. エンディングノートの作成
2. 定期的な家族会議の開催
3. 財産目録の作成と更新
メインキーワードの「認知症の不動産売買」に基づいて、総括を作成いたします。
認知症の不動産売買は家族信託と成年後見制度の活用がカギ【総括】
認知症患者の不動産は本人の意思確認ができず、単独での売買は不可
成年後見人制度と家族信託が主な解決策
成年後見人は家庭裁判所の許可が必要
家族信託は柔軟な資産管理が可能
不動産担保ローンで現金化も選択肢
事前対策として任意後見契約も有効
財産管理委任契約で将来の不安に備える
専門家への早期相談が問題解決の近道
家族間での事前の話し合いが重要
エンディングノートの作成で意思表示を明確化
定期的な家族会議で情報共有を徹底
財産目録の作成と更新で現状把握を容易に
認知症による不動産売買の問題は、多くの家族を悩ませる深刻な課題です。しかし、適切な準備と対策を講じることで、多くの問題を未然に防ぐことができます。
家族の将来のために、まずは信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
